『民法改正』 - 100年振りに民法が改正されることを知っておこう

民法変わっちゃいMAX!

最近僕はももいろクローバーZに元気をたくさんもらっているわけですが、民法も彼女たちの1/100くらいのキュートさを兼ね備えようとしているみたいです。

民法改正: 契約のルールが百年ぶりに変わる (ちくま新書)
民法改正: 契約のルールが百年ぶりに変わる (ちくま新書)
内田 貴 (著)


アイドルというものにはめっぽう縁のなかった僕すらもももクロのプロ根性には舌を巻く日々であり、またそれに禿同するレディース&ジェントルメンも多数と察せられますが、法律の"ゲンバ"でもこんなにプロ根性満点で仕事なさっている方がいらっしゃるということを知れただけでも嬉しいんだZ!(「ゼーット!」と読み習わす)



■ なぜ民法改正?
さて、民法というのはそもそも数ある法律のなかでも僕たち国民の権利のための法律で、僕たちにもわかりやすくあるべきだったんですよね。
でも、明治時代に突貫工事で作られた民法はそうではなかった。そして時は下り21世紀、もうマイナーチェンジだけではガタガタで、根本からの改正を迫られているのもなるほど納得っていうか、なんで100年も放置プレイかましちゃってるの!ヽ(`Д´)ノプンプン
…っていうのが民法改正へのデフォルトの反応なのでしょうが、実はそうでもないみたいで、日本の民法は条文に定められていなくても、「学説受継」なる解釈論の体系だったり、100年間積み重ねられた膨大な判例だったりを援用することで実務上はおおむね問題なく回っていたようです。
ただ僕が驚いたのは、この学説がもう全然に条文を読んだだけでは分からないことまでガンガン解釈するんです。それはもう「節子、それ日本語ちゃう、学説受継や」状態。その解釈論の詳細は本書に譲り割愛しますが、ここで問題なのが「条文を読んだだけでは分からない」っていう点なのです。日本の民法はBorn to be wildに原理原則だけ定められていて、モンハン的な感じで学説やら判例をぶん回しながら国民の権利を守っていたわけです。だから著者からビンビン伝わってくるのは"懐疑派"なる歴戦のハンターたちからの民法改正への批判ですよね。超絶ハンター曰く、今のままで問題ないんだからいいじゃん、と。
ただ(モンハンほとんどやったことないのでたとえが厳しくなってきたのですが)、アイルー以下の戦闘力しか持たない僕たちにはこれはもう近寄りがたいですよね。で、この国際的な標準からも取り残されつつあった民法の透明性を高めて、僕たち国民とか海外の取引先とかの人とかにもわかりやすくしようっていうのが今回の民法改正だったわけです。いいですね、オープンになっていっているんです。



民法改正、僕たちに影響はある?
こういうちゃんと法典読めば法律が分かるごっつええ感じ民法にしようという試み、もちろん僕たちに影響はあるわけですね。

  1. 法務コストの削減。経営者にとって弁護士などの専門家や複雑な体系書に頼る機会が減り費用削減(もちろんサービスを受益する消費者にコスト転換されるわけですから国民はハッピーに!)
  2. 新成長戦略と契約法。東アジアに形成されようとしている市場におけるルールメイカーになれる。すでに中国は新契約法を制定し、韓国も19世紀ヨーロッパ型の民法の改正作業に入っている。最新の民法で、目指せグローバルスタンダード☆
  3. 日常生活への影響。読んでいる限り、契約書などの書き換えは必要になるかもしれませんが、民法改正を知らずに僕たちが日常生活で困るようなことが起きるのかといえばそうでもなさそう。

■ 天災に耐える法律は世界に通用する
フランスには伝統的に「法の輸出」の思想があるそうで、それを習って、日本の法のプラットフォームを輸出するために自然災害大国ニッポンならではの天災への柔軟性の高い法律をつくり、輸出できるようになればいいですね!



■ 蛇足:オレはこう思うんだZ

  1. ところで僕が本書で知って膝打ったのは「約款(やっかん)」です。僕なんてその読み方すらあやしゅうこそものぐるほしける状態だったわけですから振り仮名をふった所存ですが、僕はこの約款というものを誤解していました。約款というのは、ソフトウェアをダウンロードするときに表示されて"Agree"を押さないとダウンロードできないもんだから読み飛ばしちゃうあれのことです(他にもクレジットカードや保険商品の契約のときとかにも付いてきます)。僕はてっきりこの約款を読んで来なかった僕は悪者で、何か問題が起きたときには企業の法務部の眼鏡のお姉さんに「あなたが読まなかったのが悪かったんだからね!」とツンツンされるためのものだと思っておりました。が、なんと、著者によると「そもそも読まないことが普通」なのだから、約款による契約は合理性が担保できていないと解釈されるっぽいです。ぽいです。じゃあなぜ企業は約款をつけているのかといえば、それはサービスの円滑な運営のため(地下鉄に乗るたびにサービス利用契約を交わすわけにはいかんですからね)。そして僕たちが(六法全書に頭を強く打ち付けて)約款を読みたくなったときにきちんとアクセスできるようにするためだそう。そしてそしてこの約款に関する「普通は読まねえだろ解釈」ですが、僕たち消費者保護のためだけでなく、とても法務に十分なリソースを割くことができない中小企業でも同様に解釈されるようで、忙しいベンチャー企業家にも朗報なんだろうと思います。
  2. 著者の経済や市場メカニズムに対する謙虚さというか誠実さに胸打たれ、"法学者"のステレオタイプから解放されました


@ymkjp